その道中は、

母の兄は、建喜という名前で、「たてき」という。その伯父さんの家に行った。伯父さんは10年間ずっと一人で家をイチから作った。冬以外は基本、小屋で過ごし、奥さんがそばで家事を手伝い支えた。冬は岡山の家に戻り、お金を稼ぎつつ、寒さから避難した。初めは5年ぐらいのイメージだったらしいが、いろんなこともあっただろうし、時間は予定通りかかったという。ちなみに岡山の家も自分で家をたてた。コトバにすれば簡素だが、一人で設計し、木を切り、運び、木の皮を剥き、やすり、コンクリートを入れ、細部まで生活出来る家のクオリティにするその過程は超人クラスの、知恵、知識、技術、辛抱と努力の結晶だ。結果をみて、憧れるのは簡単だ。伯父さんもそう言っていた。さかのぼれば、家がとても貧乏で、兄貴に高校の学費を工面してもらうところから、幾多の仕事を従事し、最後は自分の好きな世界へ辿り着くために、必死にそしてしなやかに伯父さんの船は漕ぎ続けていた。伯父さんには同郷の奥さんがいる。奥さんとは修学旅行(別の学校で)偶然話をして、意気投合し、付き合い、今日まで一緒に45年過ごしている。おばさんも小さい頃からブラジルの農園で働きたいと思っていたらしく、カナダやニュージーランドなど空や土地がひらけた場所が性にあうと何度も言っていた。東京にも暮らしていた時があったらしいが、ヒトが多すぎて、あわん!と思ったらしい。ここには鹿やイノシシ、猿、数々の虫、草花、大きな杉の木、風がいます。

二人は、朝、散歩しながら歯磨きをしたり、山菜をとったり、家事したり、残りの20%部分を完成させるために(暖炉製作中だった)日々家作りをしたりしながら、静かで、雄大な森の中で暮らしている。二人は押し付けたりしない。押し付けたりされるのが嫌いだからか、凛としていてしなやか。そしてココロから優しい。二人は自給自足を少しずつ行いつつ、クルマを改造し、キャンピングカーを作って、まだ行っていない場所へ二人で旅するのが次の目標らしい。伯父さんたちに憧れるのも恥ずかしいほど、何も出来ないなと思った。こうやって生きるのかと、どんな本よりも示されていた。俺が唯一誇れたのは、そういう伯父さんの血が入っていること。自分のチカラを痛いほど知れたことは良かったと思いたい。星めちゃめちゃ綺麗だったなー。